<ニューヨーク州ワシントン群の地図>
Washington County, New York Guide | New York Genealogical & Biographical Society
注
1.ここに使われる写真のうち【BFJ】のマークの入ったものは、著者のブログサイトから許可を得て転載しているものです。
Bedlam Farm Blog Journal by Jon Katz
2.そのほか、引用した関連情報には引用元を明示しました。引用元の表示のない写真はフリー素材です。
3.ページ数は『みんな、お前のせいだぞ!』に記載のページを示します。
■プロローグ
P5
「キャッツ! いいかい! ありゃ、まともなトレーニングじゃない。ムカついているだけだ。いちいち反応し過ぎ、喋り過ぎだ。はっきり言って、いい犬が欲しけりゃ、こっちもいい人間じゃなくって、どうするんだい!」
■第1章 中年の大博打
P12
朝靄が晴れるにつれて、はるか向こうに見える家畜輸送のトレーラーが、この集落を目指して三十号線をセーラムから西へとやって来るのが見えた。
【BFJ】
P17
その日の朝はかなり早く、五時頃、ここでのルーティンで始まった。
【BFJ】
P17
正直に言うと、頂上に置いたアディロンダックチェア二脚を目指して苦労しながら登っているのは、私だけだ。
【BFJ】
P19
この古風なグリークリバイバル様式の白い農家は、三、四十軒ほど家が点在する小さな集落、時代物の美しい二つの教会、前を通りかかって店の名に唖然とした万屋ベドラム横丁などを見下ろす丘の中腹に建っている。
【BFJ】(訳者注:写真が「白い農家」でなくなっているのは、塗装し直したためと思われます。)
P28
引っ越してすぐにやって来た消防団員が助言していった。
「貴重品は、いくらか家畜小屋にでも分けておいた方がいい。火が出ても、俺らが来る時分にゃ、ここは燃えちまってる。だいたい、俺ら、土台を専門に消す火消しだからなあ」
https://www.facebook.com/hebronvolunteerfirecompany
P30
ローズにリードを付けて道を横切り、インクでも流したような暗闇を見つめた。
【BFJ】(日中でも日差しが届かないほど鬱蒼と木々が生い茂った森)
P31
「ローズ、頼む、羊を捕まえてくれ! 探してくれ!」
P32
九キロほどの子犬が、一匹百三十キロはありそうな羊の群れを一つにまとめ、好戦的な牡羊ににらみを利かせている様子は大したものだ。
【いずれもBFJ】
■第2章 開業準備
P34
万屋〈ベドラム横丁〉は、セーラムから伸びる三十号線が西ヘブロンにぶつかってT字路になる交差点にある。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100068164502050&sk=photos_by
【BFJ】
<べドラム横丁>の所在地↓
https://maps.app.goo.gl/gi1EkNqHzEo6AbtLA
P40
アーガイルへの途中、人里離れた未舗装の一本道を走っていると、シェルダン中古トラック販売店に出くわした。
(ドローン撮影による秋のアーガイルの美しい町並みをご覧いただけます。↓)
https://www.townofargyleny.com/
P45
それで、ケンブリッジにあるコーヒーショップ〈豆アタマ〉で干し草探しを始めることにした。
「干し草を探してる」
コーヒーショップの親仁(おやじ)ビルに大声で言ったら、ビルが口を開く前に、客の三人がカウンターを横にずれて話に入ってきた。
【BFJ】
ケンブリッジの町↓
https://maps.app.goo.gl/T5iaMNVLwe2iQAJCA
P45
私が買うべきは大きなロールベールか、小さくまとめたスクエアベールか、たちまち議論になった。ロールは長持ちだが、トラクターが無いと動かすのは無理だ。
P46
干し草の一件も、私も、遥か彼方に置き去られたので、コーヒーを手にそっと店を出て、すぐそこの<スチュワート>へ車を出した。
About Stewart’s Shops: Our Story, Values & Commitment
P48
赤いトラックは、82年型の典型的なシルバラード、3500ドルだと言う。
1982 Chevrolet Silverado for Sale on ClassicCars.com – Yahoo Image Search Results
P45
フォートエドワードの、ショッキングなほど親切な自動車登録所で登録した真新しいナンバープレートを付けて、・・・
フォートエドワードの自動車登録所の場所↓
https://maps.app.goo.gl/VZkF75RYZUgJ8bqk6
■第3章 新米羊飼い
P56
開けたブラインド越しに、初秋の光が眼下の谷に広がっていくのがわかる。
【BFJ】
P56
ローズが、またクレートから抜け出したのに違いない。・・・この犬は熟睡することがない。・・・骨や玩具を部屋から部屋へ移動させたり、庭で精力的に穴を掘ったり、木の根元で不用意なリスを待ち伏せたりするほうが好きだ。
【BFJ】
P59
家畜小屋のパドックから、アルファルファとオーツ麦と人参を混ぜ固めたドンキークッキーをねだって、陽気にいななくキャロルの声が聞こえる。
【BFJ】
P60
毎朝、脚をストレッチしながら、柵沿いに巡回する。
【BFJ】
P72
偶然、その日の午後はグランヴィルの大型家畜専門の獣医、アマンダ・アルダーリンクが羊の健康チェックを兼ねた予防接種にやって来ることになっていた。
グランヴィル観光案内:“Welcome to Granville”, Washington County NY
Granville, NY | History & Outdoor Adventures in Washington County
グランヴィルの町↓
https://maps.app.goo.gl/LFJQmhGbG8UDPtGx6
P77
ローズはきれいな大円を描いて雌羊の周囲を走り、冷静な支配者として十五頭を一か所に集めている。オーソンが羊の群れの真ん中に飛び込むまでは、それは驚嘆する光景だった。
【いずれもBFJ】
■第4章 べドラム牧場サポートチーム
P80
轟音と共に地響きがして、犬が大騒ぎを始めた。ニュージャージーでも、ゴミ収集車が地鳴りを立ててやってくるとこんな大騒動になった。緑と黄色のピカピカに輝くジョンディア社製トラクターが、うなりながらわが家の前を通っていく。
【BFJ】
P81
グレンフォールのケアハウスに入居しているそのおばあちゃんが、丘の上の四万平米ほどを孫のアダムに残したのは、私にとっても幸運だ。風が吹き抜ける牧場に独り住むなら、隣人はアダムみたいな人が望ましい。
【BFJ】
P83
黒いトヨタタコマで私道に乗り入れたアンソニーは、洒落たサラトガ競馬のキャップを被り、耳に鉛筆を挟んで、コットンシャツにベストを羽織っている。
1999 Toyota Tacoma – VIN: 4TANM92N2XZ505448
P84
一時間ほど、家畜小屋の引き戸にノコギリを当てたり、かんなをかけたりしながら犬の話をするアンソニーに付き合って、小馬ほどもあろうかというイングリッシュマスティフ、クリオの話を聞いた。
P88
お供犬という言葉をこれまで聞いたことがなかったが、この辺りではよく耳にする。仕事、狩り、雪かき、トラック野郎同士のコーヒータイムと、それこそどこへでも付き合う犬だ。
【BFJ】
P99
家畜小屋には二匹の猫が住み着いている。もっといるとも思うが、その猫たちは大歓迎だ。
【BFJ】
【BFJ】
■第5章 ベルチャーのロバ婦人
P110
ロバのことが気になるとは思ってもみなかったが、なんとも面白い生き物だ。犬と同じで、人に懐いて可愛い。しかし犬とは違って、ほとんど神業と言える穏やかさを有している。数千年を経るうちに、パットの言う〈ロバ性〉のオーラを完成させ、今や愛らしさと厳粛さを併せ持つ。
Jon Katz with Fanny by Ray Smith
(原著のカバーから)
P113
そしてロバは驚くほど聡い。気味悪いほど蹄鉄工や獣医のトラックを見分ける。
【BFJ】
P120
それでもベッドに入る前にフラフラしながら家畜小屋を訪ね、二頭のロバと〈モグモグバリバリ〉を楽しむのが日課になった。
【BFJ】
ベルチャー村↓
https://maps.app.goo.gl/TdCLK9iDtGvertxX8
■第6章 犬好き
P122
ニューヨーク州ケンブリッジ、大通りにある古い瀟洒なオペラハウス、ハバード館での朗読会。
[訳者注]
女性公民権運動の指導者スーザン・アンソニーは、1894年にこの会館でのワシントン郡における女性参政権獲得のための大会において、満席のなか記念すべき演説を行った。
https://hubbardhall.org/visit/
【BFJ】
ハバード館の場所↓
https://maps.app.goo.gl/xD1PPeumLgaec2HG9
P130
後日フランとダーナと判明したふたりは、近郊のカサユナから数匹ずつ車に乗せて来ていた。
カサユナの集落↓
https://maps.app.goo.gl/iEqDurn5oM8mNRea6
■第7章 良い犬
P153
言い換えれば、他の犬がしたいことをホーマーはしないということだ。素直で用心深く、気立てが良い。そもそもわが家にやって来た理由も、気性の激しい同居犬と穏やかに暮らしていける数少ない犬と、ブリーダーが見立てたからだ。それは本当だったが、ホーマーはかなりの代償を払うことになってしまった。
【BFJ】
[訳者注]
本作と上下巻の関係にある”A Dog Year”の表紙を飾った、幼い頃のホーマーの写真。(入手可能な唯一の写真。)
■第8章 厳寒の山
P182
庭の寒暖計が華氏マイナス二十度(マイナス二十九℃)を示し、凍てつく風はさらに厳しいこの一月の朝まで、有意義で充実した人生を知らなかったのだと思った。この気温下で、ロバの体温を毎日測らなければならなくなったのだ。それも肛門から。
【BFJ】
P183
「お若いの、外に出るときゃ覚悟しろよ。こんな冬に牧場の中で動物とだけでいるとな、人が変わっちまうんだぜ」
【いずれもBFJ】
P183-184
この辺りがいくらひどい冬に慣れていたとしても、こりゃあ尋常じゃないっていうほど酷い冬が影響したのか、キャロルが重病になった。
【BFJ】
P191
アーガイルで緬羊農家をやっている友人に相談したら、「人道的にやるってのを俺に聞くんなら、おらあ、撃ち殺してやれと言うね。獣医に注射針を振り回させるのが楽ってもんじゃないし、それに時間がかかるだろ。ちゃんとやれば、苦しませず瞬時だ」と、獣医より単刀直入だ。
アーガイルの町↓
https://maps.app.goo.gl/oZ6zh7gV4G3ygtXv9
P203
牧場を持って一番強く思うことは何かと尋ねられれば、全面的に私を頼る多くの動物への責任だと答えている。干し草や餌を運ばなければ、動物は食べることができない。地下からホースを引いて小屋の水桶に水を入れてやらなければ、水を飲むこともできない。
【BFJ】
■第9章 オーソンとロバの糞
P210
ところが、オーソンは自分の気ままなリズムに合わせて行進し、必ず五十メートルほど離れたりんごの木の根元、ロバが好む脱糞スポットへと駆け寄って、そのひと盛りをがつがつと食い始めるのだ。
Orson, Carol, Fanny by Jon Katz
(原著のカバーから)
[訳者注]
オーソンとキャロル(手前)、ファニー(奥)が写っている唯一の入手可能な写真。
P224
オーソンの名声は羊飼い仲間にどんどん広がって、ヘブロン、グランヴィル、ケンブリッジと、辺りの暴れ羊をねじ伏せ回った。
【BFJ】
(おまけ:不注意なリスを待つローズ)
【いずれもBFJ】
■第10章 内輪の集い
P230
姉は二週間前、私といろいろ相談しながら、ひと群れのニューファンドランド犬と共に、ボストン近郊の労働者居住区からこの池を見下ろす二万平米の土地付き農家へ引っ越してきた。
P246
心底優しいニューファンドランドは、性急に動くことがない、小競り合いもしない、威圧的でもない。
(いずれもニューファンドランド犬)
P240
姉の庭に回ると、美しいアディロンダックの山々が見渡せる。
【BFJ】
アディロンダックを望む写真↓
https://www.adirondacklife.com/2021/11/16/on-the-edge/
P249
立ち上がったローズが鼻先を狙って突進したので、牡羊は怖気付き翻って逃げていく。それを見て反転すると、今度は池に逃げ出す雌羊を追い掛け始めた。
【BFJ】
■第11章 出産シーズン
P257
緬羊の分娩に一家言ある人、ことによると専門家気取りの連中もショックだろうが、ローズを全てのお産に立ち会わせることに決めた。生まれたての子羊を、ちょっとしたスナックだと思う危険があるオーソンへの信頼感はゼロだが、ローズなら試してみても大丈夫だ。
【BFJ】
P262
だから今夜はいろんな意味で現場に居合わせる必要があった。出産が滞りなく進むことを確認し、必要なら介添えをしてやり、母親と子どもが一緒であることに配慮しながら素早く子羊をスリングに入れる。子羊を腕に抱え、ゆっくり後ろ向きに歩いて、母羊に子羊の匂いをたどらせながら親子を家畜小屋に誘導し、囲いに入れ、暖房灯に当てる。簡単なことではないのに、華氏零度を下回る気温下では、なおさら大変だ。
<ご参考>
オオツノヒツジの出産シーン(金沢動物園)写真付きで解説
(リアルな出産シーンです。苦手な方はご注意ください。)↓
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/kanazawa/details/post-1498.php
P262-263
ほとんどの牧場では羊は家畜小屋に入るが、うちの頑健なチュニス羊は畜舎に入る嗜好など持たず、ドアをぶっ飛ばして逃げる。風が凍る1月、体感温度が華氏マイナス40度に迫ろうとしていた夜ですら、丘の頂上で集まって極寒の風を受けるのを好んでいた。
【BFJ】
P287
干し草はドカッと減ることが無くなり、母親と赤ん坊は新しく芽吹いた草を食べ始め、家の周りの木々にも鳥の歌が戻ってきた。
【BFJ】
■第12章 犬との暮らし
P291
日が長くなることにも、おいしいものが地面から顔を出すことにもうれしそうな子羊たちは、急速に大きくなっている。
P291
春の陽をひどく喜ぶキャロルの姿を見ると、冬がいかにきつかったのか分かる。
【BFJ】
[訳者注]
春はおいしいものが地面から生えてくる。大嫌いな雨も厭わず、ずぶ濡れになりながら柔らかい牧草を楽しんだ2匹。
■エピローグ
P312
復活祭の日曜日は快晴、肌寒い日になった。悪天候という予報は当たらず、ブラインドから差し込む光で目が覚めた。思ったより良い日だ。
【いずれもBFJ】
P313
今年はやけにイースター(復活祭)を意識する。一つには、木々の間から教会の可愛らしい尖塔が二つのぞいているというのがある。
ヘブロンの教会↓
Hebron United Presbyterian Church – Your Community Sanctuary
West Hebron UMC | United Methodists of Upper New York
P320
「奥様方、おはようございます。今日は一つ、冒険と洒落込もうじゃないですか。巡礼見物に出掛けましょう」
P321
前方に広がる新鮮な春の草に大喜びの羊は、草地に散ってモグモグやり出す。
【BFJ】
P321
森を抜ける狭い道は草地が無いので、尻込みした羊が数匹出たが、背後からローズがせき立てた。
【いずれもBFJ】
P331-332
この最古の精神病院について多くのことを知った。今春、ケンタッキー大の精神医学研究者で犬友でもあるタグ・ヘイスターが、1989年にジョン・M・マクレガーが著した『狂気芸術の発見』という本を送ってくれた。そこに、大英博物館に納められているエッチング、ポール・サンドビーが18世紀に製作した「狂った作家」がある。エッチングには、ウィリアム・ホガースがモデルと言われる、洒落た羽飾りの帽子を被った、裸足の画家が描かれている。
https://www.meisterdrucke.ie/fine-art-prints/Paul-Sandby/135478/The-Author-Run-Mad.html
<ご参考>山田五郎オトナの教養講座「ウィリアム・ホガース」↓
【産業革命の裏!ヤバすぎる実態】悲惨で怖い絵「ジン横丁」はネガキャン絵画!?【広告代理店画家ホガース】
(おまけ)
ローズのその後と新しい犬たちの動画↓
https://www.youtube.com/watch?v=dl85O7Nn3qU